補正下着のマルチ商法にひっかかった話

友達から紹介されて仲良くなったお姉さんがいた。明るくて、美人で、スタイルもよくて、顔も広く、よく遊びに誘われた。初対面のときは私がベロッベロに酔っててこのお姉さんと連絡先を交換したことも覚えてないんだけど。ただ、異様なほどの好意を感じた。距離感が近く、なんの面白みもない酒しか友達がいない私をなぜこんなに気に入っているのだろうと疑問だった。
仲良くなって数ヶ月、とあるマッサージサロンを紹介され、連れて行ってもらった。サロンのオーナーさんも気さくで、マッサージもとても気持ちよかった。ただ、ここのオーナーさんも異様に距離が近い。ずっと昔から近所にいるおばちゃんって感じ。会ったらミカン持たせてくれそうな感じ。仲良くなれて嬉しい反面、若干の面倒くささを感じていた。
サロンに訪れること数回、体調で気になっていることを聞かれた。正直に答えたところ、それはパンツで変わるよ!ちょっと着てみない?と試着に誘われた。ここで、おや?これは…と思ったけど、親切にしてくれるし、お姉さんの紹介だし…と断れず、後日試着に伺った。
行ってみると、試着の専門スタッフの方とオーナーさんに出迎えられた。専門スタッフが私の体調の悩みについて聞いてきた。答えると、ものっそい共感してくる。ただ、この人たちもセールスなので、いくつかひっかかりそうなエピソードを用意して、これだ!っていう話をしてるのが丸わかりだった。少し私が話した内容とずれた共感話だったから。そして横にはオーナーさん。オーナーもうんうんと共感してくる。共感祭り開催。めちゃくちゃ神輿を担いでくる。怖。あと距離近い。物理的にも距離が近い。怖。
パンツだけの話だったのに、フルで試着させられた。たしかに物は良さそうな下着だった。乳首の位置が上がって背中の肉がすっきりしたことは素直に驚いた。ただ、肉の入れ込み方がすごいね。パンでもこねてんのかな?えっこれを定期的にトイレでやらないといけない?オラ一人じゃできる自信がねぇだよ〜。お尻も太ももに流れていたけど、ちゃんと境目ができましたよ!って言われたけど、そりゃ幅広のケツ全体を覆うパンツ履けば境目はできるわなぁと思いつつ、感動している素振りを見せた。自分の中の女優の才能を感じた。このままじゃ紅天女に選ばれてしまう。
あと素材と効能について話された。これを着れば体温が上がるだの、リンパが巡るだの、代謝がよくなるだの。私が知らないだけなんだろうけど、そんなにすごい素材だったらもっとポピュラーになっていそうですけどねぇ。まぁ言わなかったけど。だって私はガラスの仮面を被っているから。
試着が終わり、ついにお見積もりのお時間。畳みかけるかのように一式見積もられた。80万。試着専門のスタッフさん、私と初対面で80万ゴリ押ししてくる。あなたの為を思って勧めてます!と。マジで無理だったので、減らしに減らしてみたら、なんか怒られた。えっ(笑)いや、いきなり80万ゴリゴリ推してくるお前を私は怒りたいんですけど。この時点でさらさら買う気が無くなっていた。
でもね、全然帰してくれない。印をつくまで帰してくれる雰囲気じゃない。これがマルチ商法…お噂はかねがね…ついにお世話になってしまったのか…と少し感慨深かった。もう何もかも面倒くさくなってしまったので、適当なところで印鑑をついてしまった。買うとなればこっちのもの、契約内容もクーリングオフの説明もほぼ無く、商品が届いたら持ってきてください!アフターフォローもバッチリなんで!とさっきまでの帰してくれない雰囲気はどこにいったのか。でも私も疲れ切っていたので、はいはいはいはい言ってすぐにサロンを出た。開放感がすごすぎて、その足でラーメンを食べに行った。あのとんこつラーメンの美味さ、一生忘れない。
なんの説明もなく握らされた契約書を家に帰って読んだら、紛れもないマルチ商法だった。きっとこういうシステムを説明しないといけない決まりなんだろう。説明なかったけど。紹介者は数10%利益がもらえるらしい。その紹介者の欄にはばっちり直筆でお姉さんの名前と住所が記入されていた。
サロンのオーナーがリーダーで、お姉さんを含めたグループで活動しているようだ。私をカモにする為にあんなに仲良くしていたのかぁ…と思うと、とても悲しかった。と、同時に怒りがすごかった。翌日にはクーリングオフの通達を出した。物はいいしいいかなぁと思っていたけど、死んでもあいつらの利益になりたくない気持ちのほうが強かった。あと、物が届いたら開けずに持ってきてくださいと言われたのは、下着の付け方講座という名の、その場で着させて返品できないようにするためなんだろうなと思い、身震いした。
クーリングオフの通達を出した後、一応お姉さんにクーリングオフしたことを伝えると、サロンのオーナーから引き止めの連絡ががっつり入ってきて余計にイライラした。内容を理解してクーリングオフしているので、これ以上の説明は不要と伝えているのに、電話したい、クーリングオフの説明が不足していた、と。挙句、通達を出したのなら、こちらから本社に連絡してクーリングオフを止めてもらいましょうか?と言ってきた。仕事中だったけど、思わず笑ってしまった。どんだけ引き止めたいねん。なんかペナルティでもあるんか?本社に連絡するつもりはなかったけど、通達が届いた頃を見計らって本社に連絡し、クーリングオフを止めようとしているから聞き入れないでそのままクーリングオフをしてくださいと念押しした。本社の対応はとてもスムーズだったので、ちゃんとしている会社ではあるんだなと感じた。
結局、お姉さんとの連絡を絶った。お姉さん自身は本当に素敵な方だったと思う。でも、友達に高額商品を買わせて自分の利益にするのはどうだろう。あっちは私のことを友達と思っていなかったのかもしれないけど。
もし、マルチ商法に誘われて断れず購入してしまったら、迷わずクーリングオフしてほしい。インターネットで検索すると、相手は親身に説明してくれたんでしょ?その場で納得して買ったのにクーリングオフするのは人としてどうなの?みたいな記事も出てくるけど、知り合いに囲まれると気を使って何か買わなきゃいけないという気持ちに絶対なってしまう。その買い物は本当に必要だったのか?人間関係で買っていないか?後悔しないか?考えてほしい。そのためのクーリングオフ制度であるのだから、罪悪感は持たないでいい。